<所得税と相続税の両方を節税できる常套手段>
私の叔父は個人で塗装工事の仕事をしていて時々、
銀行の経営セミナーに参加し節税ノウハウをそこで聴いて参考にしていました。
叔父は真面目な人ですので、誤魔化しなどはせずに
正直に確定申告をして苦心しながらも毎年納税してきました。
その叔父も70歳を過ぎて後継ぎへ事業を譲る時の準備や相続のことを考えて節税を勉強し始めたのです。
これはその叔父から聞いた体験談です。
叔父は経営セミナーでアパートを利用して所得税と相続税の両方を節税できる方法を知ったのです。
その内容は、アパートの家賃収入は減価償却費や管理費を費用に計上することによって
不動産所得を計算上赤字にすることが出来て、
更に塗装工事業の事業所得と通算して所得税を節税することが出来るというものです。
実際に叔父のケースでこの方法を利用すれば、
所得税を10年間は節約できるというシュミレーションもしてもらいました。
相続税対策としても土地の相続税評価額を下げることが近道で、
節税の常套手段としてよく用いられるのがアパートを建てて
土地を貸家建付地にして評価額を下げる方法であると教わったのです。
<叔父の誤算>
叔父は祖夫から受け継いだ土地を大事に守ってきましたが、
何もしなければ子供たちは相続税のために土地を処分しなければならなくなることをそのセミナーで知りました。
そして、広い敷地の一角に銀行から借り入れをしてアパートを建てることを決意したのです。
アパートが完成して2年ほどは、ほぼ満室状態で資金繰りも順調でしたが
翌年、隣の敷地に低層の高機能マンションが建ったころから空き室が出始めました。
震災で一時高騰していた建築価格が下落し始めたため、
その分品質の高いマンションが安く作れるようになって家賃も抑えられるようになったのだそうです。
叔父も家賃の値下げで入居者をつなぎ止めようとしましたが、空き室は増えるばかり。
ついに家賃収入は借入金の返済額をも下回るようになってしまいました。
所得税の節税どころか本業の塗装業の利益から返済資金を充てている状況です。
そしてついにいま叔父はアパートの売却を考えています。
<まとめ>
節税対策としてアパートを建築したとしても、収益が保証されているわけではありません。
やはり事前に周辺の情報を十分集めて、空き室が出ても借入金の返済が重荷にならないような
等価交換方式を利用するなどの対策を取っておく必要があったのだと思います。