一般に同族会社と呼ばれる会社では、
会社の所有と経営が一致しており、
多数の株主を有する一般の株式会社では
ありえないような公私混同ともいえる取引を行う傾向があるため、
税務上の問題が生じてしまうことがしばしばあります。
たとえば会社所有の時価1億円の土地があったとします。
この土地を社長に100万円で売るとしても、
同族会社の株主はそのほとんどが同族の人間ですので、
誰も反対しないでしょう。
むしろ、社長に不当に安く売ってしまったことによって生じる損失を
赤字として計上することで、法人税を大きく節税することができますから大喜びです。
というよりも、実際は、そのような法人税回避を目的として、
意図的に不当な取引行為が行われるのが常です。
このような売買を、同族会社でない一般の会社で行おうとしても、
すぐに株主代表訴訟が起こされ、ポシャってしまうのがオチですから、
そんな不当な売買が取締役会の議題にあがることすらないでしょう。
つまり、このような不当な取引を同族会社が行っても、それをそのまま認めてしまっては、
課税上著しく不公平になってしまうのです。
そのような不公平を回避するために用意されている規定が、
法人税法第132条の「同族会社の行為計算の否認」です。
簡単に言うと、同族会社が法人税負担を回避することを意図して
不合理な取引をした場合には、税務署長の職権で、その取引の効果を否定し、
適正な取引が行われたものとして税金の計算をやり直します、という非常に厳しい内容です。